保守論客の独り言

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これでは北方領土を取り返せない(1) ~元海上自衛隊トップの妄言~

海上自衛隊に入隊以来34年間、潜水艦艦長を始め、種々の組織の長やスタッフを経験したとされる金沢工業大学虎ノ門大学院教授・伊藤俊幸氏が次のように丸山穂高衆院議員を批判する。

丸山穂高衆院議員による「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」「戦争しないとどうしようもなくないですか」との発言にはあきれてものが言えない。国際紛争を平和的に解決するため、日々懸命に努めている自衛隊員や防衛省、外務省の職員に対する冒涜(ぼうとく)的な発言といえよう》(5月17日付産經新聞正論)

 私はむしろこのような伊藤氏の発言に<呆れて物が言えない>。伊藤氏は、自衛隊員は<国際紛争を平和的に解決するため、日々懸命に努めている>という。果たしてそうか。文民統制という訳の分からない縛りによって紛争解決できないもどかしさに、自衛隊員たちは日々臍(ほぞ)を噛む思いなのではないかと思うのだけれども、違うのだろうか。

 軍事力こそ「正義」だと考えている国との<国際紛争を平和的に解決する>とは「国際紛争を解決する気がない」ということである。自衛隊員にそれが分からぬはずがない。意気地のない日本政府が手足を縛りつけているから奪回したくても拱手(きょうしゅ)傍観するしかない。これほど情けないことはない。

 自衛隊員が<日々懸命に努めている>というのは分からなくはないが、これと同様に<防衛省、外務省の職員>を扱うのも間違っている。役人のどこをどうみれば<日々懸命に努めている>などと言えようか。北方領土が還ってこないのはむしろ役人の怠慢の所為(せい)ではないのか。

自衛隊の使命は、「日本の平和と独立を守る」である。「平和を守る」とは、戦争しない状態を守り続ける「抑止力」として機能するということだ。そしてその抑止が崩れた場合「独立を守る」ため攻撃してくる敵を公海或(ある)いはその上空で排除する「対処力」として機能するという関係だ。だからこそ「警察以上戦力未満」の「自衛のための必要最小限度の実力」であり、国連憲章の定めどおり、他国に侵略して戦うことはしない存在として位置づけられている》(同)

 これが自衛隊の指揮官の言葉であれば百点満点をあげても良い。が、伊藤氏は今や外の人間である。にも関わらずこのように言うとすれば、これが正しいと思っているということであろう。

 第2次大戦停戦後に奪われた北方領土を奪還することは他国を侵略することなのか。<あきれてものが言えない>と言っていることからすれば、そう思っているのであろう。【続】