保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

いたずらに労働人口減少を煽る日経社説(2) ~生産性の向上が必須?~

どうも現在の産業構造を維持したまま、労働力不足を女性や高齢者で埋めようとしているのではないかという疑いが濃厚である。それでは不足の穴は埋められても、生産性の向上は見込めない。女性には女性に適した、そして高齢者には高齢者に見合った働き甲斐のある職場作りを行わねば意味がない。

 が、おそらく今言われているような労働力不足とは、ただ低賃金で働いてくれる人間を増やしたいというだけのことのように思われる。一昔前、「非正規雇用社員」がフルタイムで働いても生活保護の受給額に及ばないなどという現象があったが、社説子が言っているようは話は、要は、会社の利益を大きくするために低賃金労働者を増やしたいということに過ぎないのではないか。外国人労働者の話も同一線上にある。

《女性の就労では、夫の配偶者控除を考えて仕事の量を調節してしまうなどの問題がある。「専業主婦モデル」を前提にしない制度への改革を政府は急ぐ必要がある》(1月15日付日本経済新聞社説)

 これほど露骨な話もない。配偶者控除に引っ掛かる人達はまさに低賃金労働者である。配偶者控除のせいで仕事を抑えている人達を控除を廃止するなりしてもっと働かせようという魂胆である。

《企業は生産性の向上が必須だ。人工知能(AI)などIT(情報技術)を活用した新しいビジネスモデルづくりや業務効率化は、一段と重要になる。

政府には企業の生産性向上を後押しする役割がある。成長分野へ人材が柔軟に移れる流動性の高い労働市場の整備は欠かせない》(同)

 経済を専門とする新聞がこんな呆けたことを言っていて恥ずかしくないのであろうか。否、羞恥心があるのならこんな社説を掲げることはないだろう。

 確かに<生産性の向上>は必要である。が、それは短期的な問題でしかなく、中長期的に日本はどのような産業構造を目指すのかについてのなにがしかの見通しを持つことの方が余程重要である。政府がしなければならないのは、<企業の生産性向上を後押し>などではなく、日本の将来像を一定明確に打ち出すことである。

 が、日本はかの戦争に敗れて以降、主体的に物事を考え決断することから逃げ続けてきた。が、米国抜きのTPP11という経済の枠組みが出来た以上、日本は否も応もなく矢面に立たざるを得なくなってしまったのである。最大の経済大国の日本が指導力を発揮しないTPP11など「張り子の虎」でしかない。

 安倍政権の金融緩和によって円安株高となり、旧い産業構造が延命出来たが、これがいつまで続くわけはないことに企業側も気付いているはずである。いずれ、いくら金融緩和しても円高へと向かうという時がやってくる。その時、現在のような輸出依存型の経済構造では持たないから、「物作り」から「価値作り」への転換をうまく推し進めなければならないのである。【続】