保守論客の独り言

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いたずらに労働人口減少を煽る日経社説(1) ~労働人口が20%も減る?~

《働き手の減少に改めて危機感を持つ必要がある。日本の2040年の就業者数は17年に比べ20%も減る可能性がある、との推計を厚生労働省が公表した》(115日付日本経済新聞社説)

 「可能性が高い」と言うのならまだしも、<可能性がある>などという、なるのかならないのか不確かな話は、眉に唾して聞く必要がある。

厚労省有識者研究会が就業者数の長期の推計結果を含めた報告書をまとめた…経済がゼロ成長に近い状況が続き、女性らの労働参加が進まない場合、40年の就業者は17年から1285万人減って5245万人になる。

経済成長と労働参加が進むケースでは40年の就業者は6024万人と17年比で8%減にとどまる。ただしその場合でも、1559歳の就業者数は19%減少する》(同)

 要は、今後20年間にわたって景気が停滞し続ければ労働人口が相当数減少するということなのであろう。勿論、最悪の事態も想定した上で政策は立てられるべきではある。が、この最悪の事態だけを取り上げて危機感を煽(あお)るようなやり方は議論の仕方として正しいとは言えないだろう。

《日本が成長し続けるには打てる手をどんどん打っていかなければならない。女性や高齢者らに就労を促すとともに、働き手1人あたりが生む付加価値を高めることが不可欠だ。政府も企業も多面的な取り組みが求められる》(同)

 私はこのような意見に首を傾げざるを得ないのであるが、そもそもの話、日本は本当に成長し続けなければならないのかどうか。しばしば日本経済は成熟期に入っていると言われる。もはや新興国のような成長は望めない。だから「経済成長」に代わる評価の物差しが必要になってくる。

 GDP(国民総生産)で経済成長を測れるのは発展期までであって、経済規模が大きくなった日本のような国では、GDPの数値で景気の良し悪しを判断すると狂いが生じる。

 ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・Eスティグリッツ氏は、GDPに代えて「包括的な豊かさ」(Inclusive Wealth)という新しい指標を提案している。「包括的な豊かさ」は国民の豊かさや持続可能性を測るのに対し、GDPは国の経済規模を測る。GDPの成長率ばかりに目をとられていると、判断を誤りかねない。

 働きたい女性や高齢者に場を提供しようというのなら問題はない。が、労働人口が減少するとGDPは伸びないから女性や高齢者にも働いてもらわねばならない、などという話は、キムタクではないけれども「ちょっと待てよ」と言いたくなる。【続】