保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

陛下の政治的発言とマスコミのその政治利用(3) ~平成は戦争のない時代だったのか~

《戦争の天皇でなく、平和の天皇でいられた喜びは、昨年12月23日のお言葉でも明らかです。85歳の誕生日を迎え、陛下はときに涙声になりつつ、こう述べたのです。

 「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵(あんど)しています」

 そう、平成とは戦争のない時代だったと、後の世にも記憶されることでしょう。心から喜ばしい思いで万感胸に迫ったのではないでしょうか。共感を覚えます》(1月4日付東京新聞社説)

 果たして平成を<戦争のない時代>と日本の国家元首が公の場で言い切ってよいものかどうか。1つは、北朝鮮の「拉致」問題である。拉致問題が解決せぬまま平成が平和であったかのように言うのは、少なくとも私には違和感がある。もう1つは、世界的に見れば紛争や戦争はあったのであり、陛下の発言は「一国平和主義」に傾いてしまっているということである。

 前段で折角

「世界各地で民族紛争や宗教による対立が発生し,また,テロにより多くの犠牲者が生まれ,さらには,多数の難民が苦難の日々を送っていることに,心が痛みます」

と仰っておられるのだから、このようなことは言わぬに若(し)くはないように思うのである。案の定、左寄り論者に<共感を覚えます>などと利用されてしまった。

《日本は平和をずっと守ってきました。戦後73年間も戦争に加わることがありませんでした。これは世界的に希有(けう)な国であるのは疑いがありません。もちろん戦争放棄を定めた9条の力のゆえんです》(同)

 が、これは裏を返せば、世界の紛争を見て見ぬ振りをしてきたということに他ならない。他国には関係のない自国の法律を盾にして、世界平和への貢献を拒絶してきたということである。

 このように言えば、日本が戦争に加担すればよかったのかなどと短絡的に批判する人が出てくるに違いないだろうが、世界平和への貢献は独り武力行使だけではない。外交努力による紛争解決のみならず、紛争を未然に防止すべく、政治、経済、文化、教育などなど、戦後日本が積極的に世界と関わってきたとはお世辞にも言えるはずもない。

 もっと言えば、平成の日本が戦争に巻き込まれなかったのはたまさかの「偶然」に過ぎないということである。1つは在日米軍が睨(にら)みを利かせていたために、他国が日本に手出しを出来なかったということ、もう1つは、日本の軍拡を歓迎しない米国の「ウィーク・ジャパン派」が日本に参戦を迫らなかったということである。

 幸い日本列島の上空を通過し事なきを得た北朝鮮のミサイルがもし日本に着弾し大きな被害が出ていたらどうなっていたか。もし中国の活動家が尖閣諸島に上陸した際、おとなしく引き下がらなかったらどうなっていたか。

《平和国家の外堀は、いつの間にか埋められています。特定秘密保護法集団的自衛権の行使容認、安全保障法制、「共謀罪」法…》(同)

 確かに、おそらくは米国の要請によってこのような法の整備を行ってきたことは危険なことだと言わなければならない。が、一方で、自国第一を掲げる米国がいつ東アジアから撤退するやもしれず、日本独自の防衛力強化、体制の整備は不可欠である。

軍縮と平和的外交という手段で平和を築ける知恵を人類は知っています。「戦争のない時代」を続ける努力が求められます》(同)

と社説子は言う。が、平和を唱えるだけでは平和が得られないこともまた歴史が教えるところなのではないだろうか。【了】