保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

陛下の政治的発言とマスコミのその政治利用(2) ~左寄り新聞の恣意的憲法解釈~

第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

憲法尊重擁護義務といわれる重要な規定ですが、大切なのは、この一文に「国民」の文字がないことです。これは日本国憲法が社会契約説に立っているからです。

 世界史を見れば、政府は暴走する危険が常にあります。だから、憲法を守るよう命ぜられているのは政府であり、権力を行使する人だけなのです。権力を暴走させない役割が憲法にはあるのです。

 天皇もその一人です》(1月4日付東京新聞社説)

 日本国憲法が<社会契約説>に立っているから国民には憲法尊重擁護義務はないなどというのは屁理屈以外の何物でもない。

《本條(=第99条)が國民をあげていないことは、國民のこの憲法を遵守する義務を否定したのでないことは、言を俟(ま)たない。殊更(ことさら)に國民をあげなかつたのは、公務員が直接に憲法の運用に接觸(触)するため、それらに憲法を尊重し擁護することを求める特別の理由があるのみならず、この憲法自體(体)が、前文で明言するごとく日本國民が確定したものである、従つて、制定者であり、主權者である國民が、國家の根本法たる憲法を尊重し擁護しなければならないことは、理の當(当)然であつて、自ら最高法規として定立したものを、制定者自身が、破壊することを豫想するのは、自殺的行為といわねばならないであろう》(『註解日本國憲法 下』(有斐閣)、pp. 1495-6)

 世界史を見れば、なるほど政府が暴走する危険もあるだろうが、同時に民衆が暴走する危険もある。民衆が、自分たちが暴走する危険を棚に上げ、政府が暴走する危険だけ言挙(ことあ)げし、これを憲法で縛ろうとするのはあまりにも虫が良過ぎる話である。実際、「革命」を起こしたのも、「ヒトラー」を作り出したのも、民衆の熱狂であった。

 東京社説子の天皇に対する無理解も悲しいものがある。天皇には「権威」はあれども「権力」はない。これは鎌倉時代以来の伝統である。明治時代が天皇を政治利用したため、天皇に何か「権力」があるかのような誤解が生じてしまったが、「天皇は君臨すれども統治せず」でしかなかった。

 つまり、天皇憲法で縛る必要など元からないのである。否、天皇という存在は、悠久の歴史を礎(いしずえ)とした伝統的存在なのであり、憲法などという俗世の「決め事」で縛ることなど出来るわけがないと考えるのが、先達から受け継がれてきた「經國濟民」の「智慧」なのではないだろうか。【続】