保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

所信表明演説を巡る政治の貧困(3)~「移民」政策は欧米の後追い愚策~

《この春、高校、大学を卒業した若者たちの就職率は過去最高水準となりました。有効求人倍率は、2年近くにわたり、全国47全ての都道府県で1倍を超えています。こうした中で、全国の中小・小規模事業者の皆さんが、深刻な人手不足に直面しています。

 このピンチも、チャンスに変えることができる。

 IoT、ロボット、人工知能ビッグデータ。第4次産業革命イノベーションを取り入れることで生産性の向上につなげます。その活用を阻む規制や制度を大胆に改革していきます。本年度から、固定資産税ゼロのかつてない制度がスタートしました。中小・小規模事業者の皆さん、地域を担う中堅企業の皆さんの生産性革命に向けた投資を力強く後押しします》(所信表明演説

 <生産性革命>などという大層な話を間に受ける中小企業が一体どれくらいあるのだろうか。否、そもそも<生産性革命>って何なのだ。「中小企業の皆さん、IoT、ビッグデータを活用し、ロボット、人工知能を導入して生産性を向上させましょう」ということなのか。が、これでは大企業の客になれと言っているようなものではないか。

 人手不足解消策として「移民」政策を行うと言う。

《一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れる。入国管理法を改正し、就労を目的とした新しい在留資格を設けます。出入国在留管理庁を新たに設置し、受入企業の監督に万全を期します。社会の一員として、その生活環境の確保に取り組んでまいります。更に、日本人と同等の報酬をしっかりと確保いたします》(同)

 今欧米において大問題となっている移民政策を後追いで行おうというのはとても正気とは思われない。人手不足だから外国人労働者を受け入れればよいというのはあまりにも短絡的である。

 「移民」によって<人手不足>を解消するのは最悪のやり方である。まず、「移民」によって<人手不足>が和らげば日本人労働者の賃金が上がらないという問題がある。企業の利潤が日本人に還元されずに移民受け入れに費やされるというのは博愛主義的なのかもしれないが、やはりおかしな話である。

 また、<人手不足>は企業に人海戦術的経営手法の転換を迫ることになり生産性の向上が見込まれる。このことによって、海外の人件費が安い企業との差別化が図れるのである。

 が、安倍政権のやっていることは「あべこべ」である。円安にせよ、移民にせよ、要は海外の人件費が安い企業と同じ土俵で対抗しようとしているだけであって、このようなことをやっていても生産性は向上せず、産業構造も転換できず、日本の将来はない。【了】