一燈照隅(池内昭夫の日記)

~天邪鬼(あまのじゃく)の独り言~

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■三木清『人生論ノート』論  5/2(1)「100分de名著」の偏見  5/8(2)幸福論を抹殺したカント  5/15(3)哲学書だからこそ難しい  5/22(4)偏見による幸福と成功の誤読  5/29(5)真の幸福と神  6/5(6)虚栄と虚無   6/15(7)神の怒を思へ! NEW

所信表明演説を巡る政治の貧困(1)~伝統断絶を訴える安倍首相~

24日、臨時国会が召集され、安倍晋三首相が所信表明演説を行った。

「次の5年、いや3年もあれば、世界は、私たちが今想像もできない進化を遂げるに違いない。そうした時代にあって、私たちもまた、これまでの「常識」を打ち破らなければなりません。私たち自身の手で、今こそ、新しい日本の国創りをスタートする時であります」

 さしたる準備もせぬまま、半ば出たとこ勝負のように、変革の荒波へと国民を駆り立てる。さすが左翼政治家安倍首相だけのことはある。

 まさに「変革の波に乗り遅れるな!」と言わんばかりであるが、そもそもこの変革は何処へ向かうものなのか、それはどのような危険が伴うものなのか、そしてどのような危険回避策が用意されているのか、そういったことが何も語られぬまま、ただ「常識」を打ち破れだの、新しい日本の国創りをスタートするだのと国民を煽ることがさも指導力であるかのような「錯覚」と「誤解」がここにはある。

 百歩譲って、「常識」なるものに囚われていては、閉塞状況を打開できないということもあるであろう。が、だからといって日本人全員が「常識」を打ち破ってしまっては「無秩序」を招き、状況を「混沌」へと導くだけである。旧弊や因習を打ち破れというのなら解る。が、社会秩序の基礎をなす「常識」を打ち破れなどという破壊的扇動を私は認めるわけにはいかない。

 安倍首相は、<新しい日本の国創りをスタートする>という。傲慢そのものである。日本国はそんな薄っぺらで軽いものではない。これまで築いてきた重厚な歴史伝統をどうして簡単に打ち捨てて新たに創らねばならないのか。

 国民のほとんどが気付いていないだろうし、大事なことであるとも思わないのであろうが、安倍首相は来年5月、天皇の退位問題に政治が介入し差配するという「伝統断絶」「文化破壊」を行おうとしている。天皇皇位継承は伝統に基づくものであって、これに政治が介入するなど以ての外である。

 そもそも現行憲法万世一系たる皇室の伝統に勝手に割り込んできて

第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

などと勝手な決まりを設けたのであるが、このたび史上初めて伝統ではなく<主権の存する日本国民の総意に基>づいて皇位継承がなされることになるわけである。穿(うが)ってみれば、<新しい日本の国創りをスタートする>とはこの意味ではないかと推察されなくもない。

 安倍首相が本当のところどう思っているのかは分からない。が、言っていることはそういうことである。【続】