保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

北海道の全道停電と泊原発

《北海道胆振(いぶり)地方で大地震が発生し、道内では初めて震度7が観測された…地震の影響で、北海道全域の295万戸が停電する異常事態となった。救出、救援に支障をきたす上、市民生活や経済活動にも大きな影響が出ている。経済産業省によれば、全面復旧には、少なくとも1週間以上はかかる見通しだという》(9月7日付毎日新聞社説)

 全道停電などという異常事態がどうして起こったのか。細かなことは専門家の説明に依るとして、要は、震源地の近くにある苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所地震の揺れを感知して緊急停止したからであった。苫東厚真火力発電所は管内電力の約半分を賄っていたため、これが地震によって止まったため管内の他の火力発電所に能力以上の負荷がかかり連鎖的に停止してしまったのであった。つまりは、1つの発電所に依存する歪(いびつ)な構造となっていたことがこのような事態を招くことになってしまったのである。

泊原発も外部電源を喪失し、非常用ディーゼル発電機で燃料プール内の使用済み核燃料を冷やすことになった。福島第1原発事故を連想させる事態だ》(同)

 が、福島第1原発事故後設定された新規制基準に基づいて整備されていた泊原発は、全道停電という想定外の異常事態にも問題なく対応できることが実証されたとも言える。

 さて、泊原発が動いていたら全道停電などという事態には至らなかったのになあ、と思うのは私だけであろうか。おそらくこのことを口にするのは禁忌(taboo)なのであろう。そんなことは口が裂けても言えない。そんな空気が感じられる。

 一方、原発再稼働推進派は次のように書く。

東日本大震災後に停止された泊原子力発電所の3基が稼働すれば、供給力は200万キロ・ワットを超える。原発が稼働していないことで、電力の安定供給が疎(おろそ)かになっている現状を直視すべきだ》(9月7日付読売新聞社説)

《福島第1原発事故の後、国内の原発は運転を停止し、再稼働の進捗(しんちょく)は遅い。北海道電力泊原発も停止中だ。

 ベースロード電源である原発にブラックアウトのリスクを小さくする役割があることを、再認識すべきである》(9月7日付産經新聞主張)

 私は安易な再稼働には反対であるが、エネルギー安全保障など様々な観点を考慮すれば、やはり原発を再稼働することは必要であると思っている。が、だからこそ、再稼働できるような環境を作って欲しいのである。

 泊原発を再稼働するくらいなら全道停電する方がましだなどという感情論は慎むべきであるし、停電によって多くの人の命が危険にさらされたり不安な生活を強いられるということに見向きもしないという態度は取るべきではない。

 今回の問題も踏まえ、もう一度再稼働の要不要をしっかり議論してもらえたらと思う。