保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

福島第1原発処理水の海洋放出について(4) ~UNや中韓の難癖~

《国連の人権専門家は3月、処理水は環境と人権に大きな危険を及ぼすため「太平洋に放出するという決定は容認できる解決策ではない」との声明を発表した。海洋放出は子どもたちの将来的な健康リスクを高めるなど、人権侵害に当たると警告している》(4月14日付琉球新報社説)

 世界には、日本の処理水以上に高濃度の排出を行っている原発が存在する。

 

夕刊フジ 4/14() 16:56配信)

 UN(連合国)の人権専門家とはどこの誰なのか分からないが、この発言は日本を貶(おとし)めるためのものであって客観的なものではない。

《日本政府の決定を受け、中国と韓国が「日本が責任を自覚し、科学的な態度で国際社会や周辺国、自国民の深刻な懸念に対応するよう求める」(中国外務省の趙立堅副報道局長)、「断固として反対する」(韓国政府の具潤哲国務調整室長)などと即座に非難してきた》(同)

 また、

《韓国の文在寅ムン・ジェイン)大統領は14日午前の青瓦台(チョンワデ、大統領府)内部会議で「日本の原発汚染水海洋放流決定に関連し、国際海洋法裁判所に暫定措置を含めて提訴する方案を積極的に検討するように」と指示した》(中央日報 4/14() 15:40配信)

 が、日本を非難するよりも自国の問題の方が先だろう。

ハンギョレが23日に入手した韓水原の報告書「月城原発敷地内の地下水のトリチウム管理の現状および措置計画」によると、韓水原は昨年4月に月城原発3号機のタービン建屋下部の地下水排水路(タービンギャラリー)のマンホールに溜まった水から、1リットル当たり71万3000ベクレルのトリチウムを検出した。この排水路は放射性物質の排出経路ではない。71万ベクレルは、原子力安全委員会(原安委)が定めた排出可能排水路に対する管理基準(4万ベクレル/リットル)の17・8倍にのぼる高濃度だ。

 韓水原が地下水監視プログラムを稼働した結果、昨年8月から報告書作成直前の今年5月までに、月城3号機の使用済み核燃料貯蔵槽(SFB)の下部の地下水から最高濃度8610ベクレル(1リットル当たり)のトリチウムが検出された。同じ期間、2号機の使用済み核燃料貯蔵槽の下の地下水からは最高2万6000ベクレル、1号機の使用済み核燃料貯蔵槽の下の地下水からは最高3万9700ベクレルのトリチウムが検出された。

 原発で計画された排気口と排水口を通さない「非計画的放出」は、濃度とは関係なく原子力法に基づく運営技術指針違反だ。監視と管理が行われず、原発周辺の環境と住民に及ぼす影響を評価できないからだ。月城原発トリチウムによる地下水汚染の可能性を早ければ2013年、遅くとも2017年から認識していた可能性が高い》(the Hankyoreh 2020/12/24(木) 15:39配信)​【了】​

福島第1原発処理水の海洋放出について(3) ~小泉環境相の出番です~

《福島第1原発では、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすための水や、原子炉建屋に流れ込む地下水などの汚染水が毎日100トン以上生じている。それを多核種除去設備「ALPS(アルプス)」などで浄化した処理水は、今までに125万トンたまっているという。

 処理水には、アルプスでも取り除けない放射性物質トリチウムが含まれている。それでも、薄めて海に流せば、科学的には安全だと政府は主張する。国内外の原発でもトリチウム水を海に放出しており、国際的にも認められている―というわけだ》(4月11日付中國新聞社説)

 <というわけだ>も何も、<国際的にも認められている>、それが事実である。が、

《福島で事故が起き、安全神話を広めてきた原子力関係者らの「うそ」が露呈した。それが骨身に染みた人には、「薄めれば科学的には安全」と専門家に強調されても疑念は消えまい。

 そもそも、トリチウム以外の放射性物質もアルプスで完全に除去されるわけではない。どんな放射性物質がどのくらい残るのか。人体への影響はどのぐらいか。きちんとデータを出して説明することが先だろう》(同)

 少し古い話になるが、2011年のこと、東京都内での記者会見の席上、低濃度だと証明するために飲んだらどうかとのフリーライターに言われ、内閣府園田康博政務官(当時)が処理水を実際に飲んで見せたことがあった。

記者会見で、浄化処理した福島第一原発放射能汚染水を飲む園田康博内閣府政務官=31日午後、東京都千代田区内幸町の東京電力本店、小川智撮影)(朝日新聞 DIGITAL 2011年10月31日19時9分)

 風評を一発で払拭できる秘策がある。それは、演出好きの小泉進次郎環境相が世界に向けてコップ一杯の処理水をおいしそうに飲みほすことである。

《手続きも不十分だ。放出について東電は「関係者の合意を得ながら行う」と明言していたはずだ。国も関係者の理解なしにいかなる処分も行わないと説明していた。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は放出に反対し、抗議声明を発表した。到底理解を得たとは言えない》(4月14日付琉球新報社説)

 東電がいい加減なのは指摘の通りであろう。

《東電への不信も根深い。汚染水から除去できるとしていた放射性物質が残留していたのに、積極的に説明していなかったことが18年に発覚。最近もテロ対策の不備や地震計故障問題があり、安全文化や企業体質に改めて疑問が持たれている。原発事故の賠償でも、被災者との和解を拒否する事例が相次いだ》(4月14日付朝日新聞社説)

 そもそも「関係者の合意を得ながら行う」などと東電が約束していたとすればそれこそが問題なのであって、政治的責任の負えない東電がこんな無責任な約束をすること自体許されない。

 が、逆に言えば、政治的責任の負えない東電の約束など無効でしかないことは分かり切ったことであって、今更こんな約束をぶり返したとて詮無きこととも言えるだろう。【続】

福島第1原発処理水の海洋放出について(2) ~トリチウム排出は世界標準~

琉球社説は処理水を海洋放出せず地上で保管するよう主張する。

トリチウム分離など放射性物質を取り除く技術が開発されるまで地上保管を選択すべきだ。

 第1原発では溶融核燃料(デブリ)を冷やすための注水が、建屋に流入する地下水などと混じり汚染水が発生する。東電は浄化した処理水を敷地内のタンクに保管している。来年秋以降、タンクの容量が満杯になるとみている。なぜ他に増設場所を確保する努力をしないのか》(4月14日付琉球新報社説)

 これはこれで1つの見識ではある。が、現実的には、

《海洋放出は最善の策ではない。しかし、貯蔵タンクを無限に増やし続けるわけにはいかないというのも事実である》(4月14日付東京新聞社説)

《海に流す以外に、どうしても手だてがない、人体に影響は出ないと言うのなら、厳重な監視と情報公開の体制を整え、正確なデータをわかりやすく示し、漁業者や消費者、沿岸住民などの不信と不安を“除去”してからだ》(同)

 御説御尤もである。

《関係閣僚会議で海洋放出が決まった場合でもトリチウムを海水で薄める希釈設備などの諸準備に1年以上は要するだろう》(4月11日付産經新聞主張)

ということなので、その間を利用して納得のいくようしっかり話し合うことである。

風評被害が起きた場合、東電は適切に賠償に対応するとしている。だがたとえ賠償金が出ても、漁業を続けられず、後継者が育たないなら、被災地の復興はままならない》(4月14日付神戸新聞社説)

 確かに福島の未来を考えると重苦しいのであるが、<被災地の復興>のために知恵を出し合い最善を尽くすしかない。

《処理水には技術的に除去できない放射性物質トリチウムが含まれており、海水で十分に薄めた上で海に流すと説明している。しかし、濃度を下げたとしても、トリチウムの総量は莫大な量に上るはずだ。全量放出すれば海を汚染しないと断言できないだろう》(琉球社説、同)

 が、世界には日本以上にトリチウムを排出している原発はたくさんある。 

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https://twitter.com/eiji_ebata/status/1381847485711319040/photo/1

 今更これらの原発トリチウム排出を止めるなどということは出来まい。だから、日本も排出したらよいということにはならないが、世界標準を下回る形で処理水を排出しようとしているのであるから、日本だけが非難される筋合いの話ではないことだけは確認しておくべきである。

 琉球社説の発想は憲法9条に似ている。世界情勢を省みることなく、日本にだけ厳格な規制を設けて良しとするのは「欺瞞」(ぎまん)でしかない。9条もそうだが、世界を問い詰める勇気もなく、安全安心な日本の中だけで理想論を吐いて正義に酔いしれているようでは只の「偽善者」ではないか。【続】